境界線を越える会話と越えない会話:効果的なコミュニケーションの秘訣
文字数: 約2,415文字
難易度: ★★★☆☆(星5つ中3つ)
こんにちは、Dr.EKOです。これを読んでいる方は、あなたの思いや考えを他人に、誤解なく正確に伝えられる言語的表現力をお持ちでしょうか?
日本人は真面目で賢く、おまけに正義感が強い、世界に誇れる人種です。だからこそ、様々な予防策や危機回避策が浮かんだり、問題に対する解決策を見つけることができる非常に優秀な人種だと思います。アイデアを惜しげもなく伝える寛大さもあります。
ですが、最後の「伝えるパート」でひとたび言語的表現を間違うと、その強すぎる表現力からか、口論や人間関係のトラブルに発展する余地があります。思いとは裏腹に、表現力不足から、望んでもいないトラブルが発生してしまう事は本当にもったいないことです。そして必ず防げます。
「本当にその場面、言い合いとかすれ違いになる必要あったのかな?」「だって言っている内容自体はおかしくもないわけだし…そもそもお互いに思いやりで話し始めたわけで…どこで何がズレた?(もったいない!)」
こんな時、ちょっとしたスキルでなんとかなる場面が意外に多いことを今回のコラムでお伝えします。今日からすぐに、普段の人間関係構築にお役立てていただけたらと思います。
4種類の言語的表現の違い
タイプ①:直接的な指示
「あなたは〇〇するべきだ。」「あなたは〇〇するのが良い。」
タイプ②:個人的な意見
「私は、あなたは〇〇したほうがいい、と思う。」
タイプ③:個人的な経験談
「私は〇〇した結果、うまくいった。」
タイプ④:経験談と内省(選択制)
「もし興味があれば、私がうまくいった秘訣聞きたいですか?」
実例で見る表現の違い
某職場でのAさんとBさんの会話を例に見てみましょう。Bさんは悩みがつきないタイプで、Aさんはどんな問題もパパッと解決できる特技があります。ここでは、いつも通り悩んでいるBさんへAさんがアドバイスをしようとしている場面です。
A「やぁBさん、どうしたの浮かない顔して」 B「恋人とうまくいっていなくて、仕事も手に付きません」 Aの回答例:
「また例のひどい恋人の話か。さっさと別れるべきだよ!」・・・タイプ① 「私は、君は今の恋人と別れるべきだと思うよ」・・・タイプ② 「私も昔、望みがない人と別れることが出来て、今のパートナーと出会ったんだ!」・・・タイプ③ 「似たような過去の泥沼からの脱出した私の成功の武勇伝、聞きたい?」・・・タイプ④
教え方と成長の促進
数十年前、小学校の算数の先生が言っていたことを思い出してください。課題が与えられたとき、友達が答えを教えてほしいと頼んできました。先生は答えを教えるのではなく、解き方を教えるべきだと諭しました。なぜなら、答えを教えるだけでは試験中に同じ問題に直面したときに困るからです。解き方を教えることで、生徒は自分で問題を解決する力を身につけます。
自分で解決する力を育む
Bさんに日々起こりうる悩みやトラブルは、Bさんが成長するための試練です。これを機に、Aさんが答えを教えるのではなく、解決策を見つける方法を示すことが大切です。
人生は課題をクリアしていくからオモシロい
AさんとBさんの会話が繰り広げられている職場のシーンに戻ります。Bさんに日々起こりうる悩みやトラブルは、算数のように解き方を学ぶための試練です。Aさんの回答例であるタイプ①やタイプ②は、算数の問題の答えを伝えるようなものです。この会話方法は、相手の成長を願っているというよりは、自分の考えや正義を伝えることに重きを置いています。
「また例のひどい恋人の話か。さっさと別れるべきだよ!」・・・タイプ① 「私は、君は今の恋人と別れるべきだと思うよ」・・・タイプ②
プライベートな悩みと成長のチャンス
この問題は本人でしか解決できないプライベートな悩みであり、本人が成長するチャンスと捉えられます。大切な同僚がひどい目にあっている時、何とかしてあげたいと思うのは自然なことです。しかし、グッとこらえて正解や正義を伝えることを一旦中断します。相手が自力で解決する姿を見守るためには、見守りライン、つまり境界線が必要です。
自分で解決する力を育む
解き方がわからないままでは、また似たような事象で悩んだ時に他人に答えを求めるかもしれません。問題を解決しようとすることに尽力するのではなく、答えを教えてくれる誰かを探すことに労力を費やすことになるでしょう。境界線を越えた会話は、本当に相手の成長のためなのでしょうか?